詩篇75篇 指揮者のために。「滅ぼすな」の調べに合わせて。アサフの賛歌。歌

1,私たちは、あなたに感謝します。神よ。私たちは感謝します。御名は、近くにあり、人々は、あなたの奇しいわざを語り告げます。

2,「わたしが、定めの時を決め、わたしみずから公正にさばく。

3,地とこれに住むすべての者が揺らぐとき、わたしは地の柱を堅く立てる。セラ

4,わたしは、誇る者には、『誇るな』と言い、悪者には、『角を上げるな。

5,おまえたちの角を、高く上げるな。横柄な態度で語るな』と言う。」

6,高く上げることは、東からでもなく、西からでもなく、荒野からでもない。

7,それは、神が、さばく方であり、これを低くし、かれを高く上げられるからだ。

8,主の御手には、杯があり、よく混ぜ合わされた、あわだつぶどう酒がある。主が、これを注ぎ出されると、この世の悪者どもは、こぞって、そのかすまで飲んで、飲み干してしまう。

9,しかし私は、とこしえまでも告げよう。ヤコブの神を、ほめ歌おう。

10,悪者どもの角を、ことごとく切り捨てよう。しかし、正しい者の角は、高く上げられる。

 

74篇での嘆きを受けて…

詩篇75篇は前の74篇とセットになっています。74篇では次のような叫びが神様に向かってあげられました。

詩篇74篇 アサフのマスキール

1,神よ。なぜ、いつまでも拒み、あなたの牧場の羊に御怒りを燃やされるのですか。

2,どうか思い起こしてください。昔あなたが買い取られた、あなたの会衆、あなたがご自分のものである部族として贖われた民を。また、あなたがお住まいになったシオンの山を。

3,永遠の廃墟に、あなたの足を向けてください。敵は聖所であらゆる害を加えています。

 

永遠の都だと思っていた神殿のあるエルサレムが破壊されてしまい、跡形もなくなってしまいました。ユダヤ人が自分たちが神の民だと信じるしるしだった「ダビデ系の王」「神殿を含むエルサレム」「約束の土地」が全部失われてしまいました。

ユダヤ人はぐらついていました。もう自分を支えるものは何もない。その中で74篇の詩人は叫んでいました。

 

20,どうか、契約に目を留めてください。地の暗い所には暴虐が横行していますから。

21,しいたげられる者が卑しめられて帰ることがなく、悩む者、貧しい者が御名をほめたたえますように。

地が揺らぐ時、主が地に柱を立てられる

 

この75篇はこのような絶望の最中にある信仰者たちの叫びへの神様からの応答のような詩になっています。

 

2,「わたしが、定めの時を決め、わたしみずから公正にさばく。

3,地とこれに住むすべての者が揺らぐとき、わたしは地の柱を堅く立てる。セラ

 

絶望の中で神様が与えられた約束は、定めの時に神様が裁きを行うということでした。そして、この揺れ動くように動乱の世界にもう一度秩序をもたらすという希望の約束でした。

聖書の大事なテーマに「混沌から秩序へ」があります。天地創造の時にも、混沌に対して神様が「光、あれ」と言われ、秩序が生まれていきました。ぐらつく混沌としていた世の中に、いつの時代でも神様は「光、あれ」と秩序を取り戻してくださる。

 

裁きは恐れではなく慰めとなる

6,高く上げることは、東からでもなく、西からでもなく、荒野からでもない。

7,それは、神が、さばく方であり、これを低くし、かれを高く上げられるからだ。

10,悪者どもの角を、ことごとく切り捨てよう。しかし、正しい者の角は、高く上げられる。

 

この詩篇の希望は、「裁きがある」ということです。裁きと聞くと、私たちは恐れを持ちやすいですが、悪の現実に苦しめられているものたちにとっては、公平な裁きがあるということは慰めです。

人間が人間に対して驕り高ぶり非人道的な扱いをする。自らが神のように振る舞い、人々を不当に軽んじて苦しめる。そのようなものを神様は見ておられ、その「角(権力)」を切り捨ててくださる。これは、地上で無力なものたちにとって慰めです。

神様を神様とするものたちは、人から不当な扱いを受けて、低くされていても希望があります。神様は全てご存知であられ、神様が引き上げてくださることを信じることができるからです。自分で人を引き下ろすのでも、のしあがろうとするのでもありません。神様が高いものを低くし、低いものを高くしてくださる。それを信じます。

 

神様がおられるという堅い土台に生きる

この詩篇75篇で心に留めたいのは、2、3節の言葉です。

 

2,「わたしが、定めの時を決め、わたしみずから公正にさばく。

3,地とこれに住むすべての者が揺らぐとき、わたしは地の柱を堅く立てる。セラ

 

神様が地の柱を堅く立ててくださる。神様が建ててくださる建物があり、その建物の土台は堅固です。神様がおられ、その土台の元に全ての人は等しく地に足をつける神の前に等しい存在です。

神様お一人が上から支配しておられ、全ての民は地に足をつけている。王様も奴隷もない。男性も女性もない。大人も子供もない。神様の前に全ての人は平らです。

それが見えない時代に生きています。貧富の差があり、差別がなくならない世界です。けれど、絶望しません。神様ご自身がふさわしく裁いてくださる新しい地があることを信じているからです。その地は堅く、揺らぐことがない。

信仰の眼を開いて、先に希望を持ちたいと思います。誰かを怒り憎しみに生きるのではなく、神様の裁きがあることを信じて、主の近くを歩ませていただきたい。ふさわしく取り扱ってくださる神が私たちの近くにいます。