おはようございます。清瀬バプテスト教会の牧師の松田です。4月から教会のブログを開始しました。聖書のお話や教会での活動や、牧師が読んでいる本などの紹介をしています。
さて、この2021年度から教会では、新たに取り組む目標を決めました。その中に、「神を知る」ということを掲げ、継続的な信仰教育を大事な取り組むこととして位置付けました。
宗教改革者カルヴァンはその著書「ジュネーヴ教会信仰問答」の最初に「人生の主な目的は何ですか」という問いを設定し、その答えを「神を知ること」としています。
「知る」というのは知識や情報のレベルにとどまりません。より人格的な存在のレベルに関わる「知る」という領域があります。それは、結婚などの人間関係にも例えることができます。夫と妻は互いを知り続けていく関係です。ある時点で互いのことを知り、結ばれます。しかし、それで互いを知ることはおしまいではありません。「知り続けていく」ものです。神様と人とも同じで、互いに知り続けていく。その中で、素晴らしい神様との関係が築かれていきます。
「神を知る」ということは、何も聖書だけ読んでいればいいということではありません。世の中で起こっている出来事を信仰を持っているものたちがどのように考えたらいいのかを学ぶことも含まれます。特に、今はこのコロナ禍にあり、この問題は私たちにとって今日的な問題です。
これからしばらくNTライトという神学者の書いた「神とパンデミック」という本を教会の方と一緒に読んでいきます。短い本ですが、関連する本も取り上げながら、多面的に理解できるようになれればと願っています。
ライトはこの書の「はじめに」で本書の目的を「その場しのぎの反応に抵抗する」ためとして、このコロナの現状は「嘆く時」「自制する時」として、「安易な解決策に飛びつかない時」だとしています。
この本が書かれたのは、2020年4月でコロナ禍が本格的にパンデミックとして世界中に広がった時期です。今ほど、どうしたらいいのかもよくわからない時期でしたので、この提言は非常に重要だったことと思います。
人間は何かわからないことが起こると、混乱します。そして、原因を知ろうとします。それは大事なことですが、その時に安易な答えを提供する人たちがいることも気をつけないといけません。「◯◯のせいだ!」と言って陰謀論を語る人たちが出てきます。クリスチャンだと「神の裁きだ!」と言い始める人たちがいます。
ライトは彼の神学スタイルとして、聖書とその時代背景を丁寧に読み解こうとします。また、同時代の哲学者の見解も紹介し、その見解の影響なども考察します。そして、古代の教会が取ってきた行動とその背景にある信仰も分析します。その他の著作でもそうですが、豊富な文学的な知識などからユニークがあり、かつイマジネーション豊かに文章を綴ります。
本書を学ぶことを通して、「コロナ禍時代をどうとらえるか」はもちろんですが、それ以上に「理解し難い不条理な出来事にどう向き合うか」というより本質的な理解に共に進みたいと願っています。
コロナ以外にも「なぜこんなことが?」という出来事は起こります。影響が個人レベルのこともあれば、集団レベル、国家レベルのこともあるでしょう。そして今回のような世界レベルのこともある。しかし、一番小さな個人レベルにおいてこの「不条理への向き合う姿勢」が確立できていれば、それは様々なレベルで応用していけます。
ライトはこの書でただ「嘆け」と言っているわけではありません。嘆く時に嘆き、それから動き出すことを期待しています。けれど、動き出す前に十分に嘆く時、静まって思い巡らす時が大事なのです。ライトは聖書の様々な箇所から思い巡らします。
急がずに、ゆっくりと御言葉に思いを巡らし、そこから自ずと導かれてくる方向性がそれぞれのうちに湧いてくることを祈っています。統一された解決策というよりも、緩やかな同じ希望をもった方向性が共有できれば、それで十分だと思います。
次回は5月第2週の日曜午後に行います。